テーマ『気候変動下における食の生産と消費を考える』
前年度の公開シンポジウムにおきましては、『地域を守る食と農』をテーマに開催しました。
この中で、基調講演「急速に進む命の分解」において、生物絶滅・健康・食・気候・社会などの多重危機が同時進行している今日において、有機農業をベースとして食料主権を確立し、地域レベルから食の危機を乗り越えることを提示しました。
今年度はこれら多重危機の中で、世界的に喫緊の課題となっている「気候危機」に焦点を当て,私たちの生活の基盤である食について、その持続的な生産と消費のあり方を検討したいと思います。
今日の効率一辺倒の食の生産と消費は、至るところでそのほころびが表れてきています。持続する農業生産、それは循環・共生・多様性を基本とした土―作物(家畜)―人間のバランスある関係を構築すること、また、持続可能な食料システムについて、生産性だけではなく、生産の場で働く人たち、そこに棲む生き物たちにも目を向け、将来世代や地域社会への社会的貢献を考えてみます。
会 場 コンセーレ(栃木県青年会館) アイリスホール
日 程 2024年2月17日(土)13時 ~ 18日(日)12時
第一日目
受付 | 12:00 ~ 13:00 |
開会 | 13:00 ~ 13:10 主催者あいさつ 舘野 廣幸[民間稲作研究所理事長] |
永続可能な食料システムをどう作るのか?
第1日は農業生産だけでなく、流通、加工、消費までを含む食料システム全体について考えます。
基調講演では、海外で進められている「食の本当の費用」という研究を紹介します。
それによれば、現在の食料の価格は、健康や環境のために本来支払うべき費用をきちんと反映していない(安すぎる)ことを示しています。 また、「フードテック」で作られる人工肉や完全栄養食品などが普及すれば、農業がなくても食料は生産できるというSFのような世界が訪れるかもしれません。
報告1では、コロナ禍、異常気象や米中対立などによってグローバル食料システムが崩壊し、食料システムを地域から作り直さなければならない時代になったことが報告されます。報告2では、有機給食(オーガニック給食)によって、地域社会をどうやって活性化させることができるのかが報告されます。
最後に、永続可能な食料システムをどう作ればいいのかについて参加者全員で議論します。
座長 谷口 吉光[秋田県立大学教授・民間稲作研究所理事]
基調講演 | 13:20 ~ 14:40 |
「食の本当の費用」とは?
― 永続可能な食料システムと小農・家族農業 ―
池上 甲一[NPO法人西日本アグロエコジー 協会共同代表] [近畿大学名誉教授]
報告1 | 15:00 ~ 15:30 |
「アグロエコロジー」って何?
-グリースマン著『アグロエコロジー』の翻訳を手がかりに-
小林 舞[京都大学大学院経済学研究科特定助教][民間稲作研究所常任理事]
報告2 | 15:40 ~ 16:10 |
学校給食米の有機化による地域社会の活性化
石川 均[有機農産物流通業]
討 議 | 16:30 ~ 17:30 |
夕食・懇親会【1F大ホール】 | 18:00 ~ 20:00 |
第2日目
受付 | 8:30 ~ 9:00 |
地球温暖化に適応する有機稲作技術の展望
農業は、基本的に広大な自然的環境の下で生産が行われているので、水害・干ばつなどの天災との闘いの連続であったわけです。近年は地球温暖化に伴い高温が新たに加わりました。気温に関しては、特に東北地方を中心に冷害が稲作に大きな被害をもたらしたわけですが、今日、これが逆転した問題が生じてきました。今後、温暖化のさらなる進行が予想され、農業生産への悪影響のリスクがさらに高まり、農産物の安定供給に支障をきたすことが、大いに考えられます。私たちの主食であるコメ生産において、研究者の「科学知」と農業者の「経験知」を融合し、高位安定生産のための技術問題を検討したいと思います。農業(稲作)技術は地域性が強いので、フロアからも意見を求めて議論を深めたいと考えています。
座長 舘野 廣幸[民間稲作研究所理事長]
基調報告 | 9:05 ~ 10:15 |
地球温暖化対策技術の現状と展望
中野 洋[農研機構中日本農業研究センター主席研究員]
報告1 | 10:20 ~ 10:40 |
生産現場における地球温暖化の影響と対策―新潟県を事例として―
石塚 浩二[民間稲作研究所理事・新潟県]
報告2 | 10:45 ~ 11:05 |
生産現場における地球温暖化の影響と対策―栃木県北部を事例として―
古谷 慶一[民間稲作研究所副理事長・栃木県]
討 議 | 11:10 ~ 12:00 |