相馬野馬追、ひまわり除染、有機稲作栽培試験の
視察とシンポジウムを、開催!

                                                       7月29〜30日 in南相馬




NPO法人民間稲作研究所、(有)日本の稲作を守る会、
一般社団法人グリーンオイルプロジェクトは、去る7月29日〜30日、
「神事『相馬野馬追』に捧ぐ、南相馬のひまわり除染と有機稲作栽培試験、視察研修」を実施。
視察とシンポジウムを行いました。




                    ■1日目 視察■

本来の姿で実現した『相馬野馬追』と、ひまわり畑


 早朝に栃木を出発した生産者と生協関係者は、福島県に入り、まず飯舘村役場で放射線量を計測。地上2〜3μSv/h、植え込み8μSv/hという高い数値に、一同除染の難しさを実感しました。
 その後、南相馬市で地元有機農業者らと合流し、国の重要無形民俗文化財でもある伝統神事『相馬野馬追』のお行列を見学しました。昨年は原発事故により、メイン会場である相馬小高神社が警戒区域とされたため、縮小して開催。今年4月解除となり、2年ぶりに本来の形での開催となりました。避難先からはせ参じた町民も含め400騎以上が行列を作り、その勇壮な騎馬武者らの姿からは、市民の復興への強い想いが感じられました。

 野馬追いの余韻を残したまま、『ひまわりプロジェクト』のひまわり畑を視察。広さ約20町歩、道路の両側一面に咲き誇るひまわりに感嘆の声が上がりました。近くの太田神社では野馬追いの出陣式が執り行われ、祭場に向かう馬がひまわり畑の中を歩くという、福島の方々の想いを現す光景が実現しました。


除染水田の栽培試験視察

 午後からは除染水田の視察と、被災地の視察を行いました。栽培試験の内容は、下記の通りです。

南相馬市 藤原光栄氏の取り組み

 南相馬市は今年も作付けを自粛することになり、一部の試験田のみ田植えをしています。藤原氏も試験田を希望しましたが、有機栽培ではなくJAの栽培方法でとのことで、田植えを断念。菜種は昨年10月上旬播種し、4月中旬に中耕、5月の連休から見事に咲き誇り、一面が黄色いじゅうたんを敷いたようになり、「地域の人たちの目の保養に、ひと役かったのではないか」とのことでした。

 5月下旬から6月上旬、地上部を刈り取り、すべてを持ち出して除染を終えたところで、種子の収穫は行わないませんでしたが、予想される収量は250kg/10aになったのではないかと思われます。搬出後のほ場には、米ぬかとEM菌を散布して耕起。「東電の対応に誠意が見られないのは残念。福島の米、さらに南相馬の米となると一段と厳しくなりそうだが、放射能が検出されない米づくりをめざして、がんばる」と決意を述べました。


南相馬市 杉内清繁氏の取り組み

 NPO法人 民間稲作研究所の会員農家で、福島県有機農業者ネットワークの副代表でもある杉内清繁さんは、研究所の提案に賛同していただき、2011年6月よりグリーンオイルプロジェクトの立ち上げに関わっていただきました。
 民間稲作研究所の有機農業技術支援センターに併設した搾油所で、ひまわり、大豆、なたねの搾油技術と精製技術の確立に取り組んできた結果、ひまわりで40%、大豆15%、なたね30%という搾油率を実現しました。中古圧搾機の不具合により搾油作業が一時中断したものの、回復にこぎつけ、お盆明けからフル生産に入る予定です。

 一方、自宅のある南相馬市では、ハウスで、ひまわりの品種改良のための固定種の選抜をおこなっています。固定種の選抜はNPO法人 民間稲作研究所のほ場でも実施し、ブラックオイルを素材とした油脂用ひまわりと観賞用ひまわりの固定化を行っています。

 長期間にわたって菜種、ひまわり、大豆など油脂作物を作付け、粘り強い除染活動を行うためには、経営的に安定した収益が見込めなければなりません。10aあたり15万円以上の粗収益が必要で、そのため「菜種-イネ」の2毛作による除染と、植物油の自給率向上によって収益力を高めるこころみを行ってきました。試供した品種はコシヒカリの突然変異体である「五百川」(良食味・極早生品種)です。
 水田の入水口には、セシウムの侵入を防止するためにモミガラを投入し、その層を通すことでセシウムを吸着させることとしました。


武山洋一氏の取り組み

① 2012年2月22日に水口にモミガラを設置し、高濃度汚染地域を流れる新田川からの、水田への流入を防止する処置をとりました。
② 水田の汚染も5000Bq/kgを超える値で、実験的に代かきをするとセシウムが表層3cmに約6割移動することがわかったので、表土移動機を製作して移動試験を行いました。結果は以下のとおりで、約半減という顕著な効果がありました。
 武山氏の代かき水田の調査結果(2012,7,4採種)
 核種  移動した表土   試験水田の土(2)  対照区(1)
 Iー131  98.4  77 103 
 Cs-137  3440 1950  3970 
 Cs-134 2540  1430  2860 
 k-40 661  447  652 
 Cs合計 5980  3380  6830 
アトムテックス社 AT1320Aで測定、検出下限値 5.31Bq/kg



      ■2日目 シンポジウム■

福島有機農家と、チェルノブイリからの報告


 翌日のシンポジウムは、福島の農の取り組み、農の再生、総合討論の3部構成。福島県有機農業ネットワークの菅野正寿(すげのせいじゅ)氏は、「6000Bq/kgある水田でも尻口では2000Bq/kgと3分の1になり、玄米には50Bq/kgしか出ない」。つまり、当初移行は10%と言われていたが、実は1%しかなったと報告されました。また「玄米の線量は福島でも98.4%が50Bq/kg以下。500Bq/kgを検出したのはたった2%だった」とも。さらに作付け制限地域にゼオライトを300㎏撒くという方針が、高齢者に負担となって耕作放棄地が増え、「作付け制限が心の制限になっている」と述べました。

 また同ネットワークの杉内清繁氏は、「油を売ると同時に、新エネルギーなど地域の循環を見つめ、南相馬に未来を照らす画期的なプロジェクトを立ち上げたい」と決意を述べました。

 前日視察した『ひまわりプロジェクト』を進めてきた南相馬市太田地区復興会議・事務局の奥村健郎氏は、GPSを使って太田地区470カ所の線量を測定、結果を全戸に配布し、地域が協力して学校周辺の除染を進めたことを報告。「ひまわり、菜の花による除染と、再生エネルギーの導入で農業を再生する」と、決意を述べました。

 二本松有機農業研究会の大内信一氏は、「昔は菜種を作り、それで油を搾り、搾りカスを肥料にして野菜を作った。百姓冥利につきる」と述べ、「油に放射能が残らないのは天の恵み。この事故をきっかけに自給エネルギーを作るとともに、遊休地を減らさなければならない」と話しました。

 続いて民間稲作研究所の佐藤孝志氏は、「780Bq/kgという米が出たが、これは本当に一部。山からの水を使っていたためだ」と述べ、「作って測らなければわからないので、作らせろと交渉した結果、流通させなければ作付け可となった。農家もものを言わなければいけない。この機会に、継続可能な地域を育て上げたいと思っている」などと述べました。


「チェルノブイリ救援・中部」の、河田昌東氏報告

 続いて、23年前からチェルノブイリへの医療支援を行ってきたチェルノブイリ救援・中部の河田昌東氏から、南相馬市での調査の結果と、チェルノブイリでの菜の花プロジェクトの報告を受けました。
 河田氏のチームは昨年4月から南相馬に入り、500mメッシュで市内の空間線量を測定。海側よりも山側に高い傾向が出たものの、線量はかなりのスピードで下がっている。理由としては、「半減期2年のセシウム134が多かったこと、雨で側溝や川に流れたり、地中にしみ込んでいることが考えられる」ということでした。

 農作物については、梅が高い数値を示したものの、ナスやウリ科、ネギなどは少なく、「種類によって吸収が大幅に異なることがわかったので、それを確定すれば、農家には作物の選定に、消費者には選択の基準となる」と述べました。
 米については、「玄米の数値が高くても、3分の2くらいは米ぬかに残るため、白米にするとかなり下がり、ごはんにするとほとんどが検出できないレベルとなる。これも多くの消費者に知ってもらうべき」と訴えました。

 原木椎茸は高いが菌床栽培では検出せず、果物では柑橘類に高い。それは柑橘が常緑樹で放射能飛散時に葉を開いていたため、「木全体が貯蔵庫のような状態になっている」からとのこと。しかし「リンゴ、桃、梨などの果樹の値は、たいへん低い」とのことでした。果樹園は表土をはぐとその下はまったく汚染されていないが、「表土をはげない場合は、汚染されにくい作物を植える、またはあえて汚染されやすい作物を植えて除染をする。それも無理なら、非食用作物を植えるとよい」とのことでした。

水田除染の注意点と、山の汚染の深刻度

 津波を受けた水田では土壌330Bq/kgに対し米が100Bq/kgとなり、これは塩分が土壌に吸着されているセシウムをはがし水溶性にしたためで、「稲も野菜も吸収できるのは水に溶けたセシウムだけなので、土中の水分に注意を払わなければいけない」と述べました。
 また、「有機物、腐植土なども吸収抑制は可能だが、窒素肥料は要注意で、窒素を与えるとかえって吸収が促進され、特にアンモニア系の肥料はたいへん危険」。ゼオライト、ベントナイトも効果的ですが、「吸着剤と活性炭を同時に使用すると、倍くらい吸収が促進されるのでこれも危険」。しかし逆に除染対策に使える、という研究者もいるとのことでした。

 さらに「福島県内の米の大半は50Bq/kg以下で、高く出たところは地形に要因があった」とし、「山の水が直接入るところ、砂質土壌であること」を挙げ、個人的見解として「アンモニウム濃度が高いことも危険なのではないか」と述べました。土壌やゼオライトに吸着したセシウムはアンモニアイオンではがされることがわかっているので、堆肥も完熟堆肥でなければならない。今後、山の落ち葉が腐蝕しアンモニアが発生し、雨でセシウムとともに流れた場合は、「もろに吸着効率を上げてしまうが、しかし対策を講じれば抑制は可能」とのこと。
 しかし山への影響は長期化する可能性があり、時間が経つと根からの吸収が本格化し、森林内でのサイクルができてしまうと報告されました。

菜の花プロジェクトで地域のエネルギー自給を実現する

 次に内部被曝対策として始めた、菜の花プロジェクトの報告をいただきました。チェルノブイリ原発から70㎞、人口1万人の村では、事故15年後の体内セシウムが8000〜1万8000Bq/kgという高い数値。原因はほとんどが食べ物のため、5年前にプロジェクトをスタートさせました。
 概要は、汚染させた土地で菜種を作り、オイルを搾ってバイオディーゼルオイルとして農業機械を動かす。搾油の過程で生まれるバイオマスは、メタン発酵させてバイオガスを作り、排水に残った放射能を吸着剤に吸着させて、地下に埋めます。放射性物質は種に入りますが、油を搾ると油には残りません。「規模を大幅に拡大し、菜種工場とエネルギー工場を動かす計画を地元州議会に提出している」とのことでした。 

 バイオディーゼルの装置は日本製で、3時間半で200Lの搾油と非常に効率がよく、オイルの1割は自家発電に、9割はほかの目的に使っている。ガスは日に2㎥発生し、牛舎などで使うが使い切れない量を発生。吸着剤は「汚染水500Bq/Lを使って実験し、いちばん吸着するのはゼオライトで30分で95%以上を吸着する」とのことでした。

 また菜種の汚染は500〜700Bq/kgあったものの、その裏作にはきわめて汚染が少なく、小麦ND、ライ麦13.4Bq/kg、大麦23.4Bq/kgなど、食料にも家畜のエサにも使えるレベル。菜種とほかの作物を交互に植えることで、新たな農業の復興の可能性があり、「バイオエネルギーの作出がリンクを張り、地域の自給を実現しようとしている」と結びました。


具体的に食用油の買い取り価格を決める時期

 河田氏の報告を受け、民間稲作研究所の稲葉光國代表が「グリーンオイルプロジェクト」について説明しました。「河田先生からご提案をいただいて始めたグリーンオイルプロジェクトは、菜種、ひまわり、大豆を輪作する。暫定だが移行係数は、菜種0.125、ひまわり0.123とほぼ同等だ」と述べました。
 菜種は一般的には10月くらいまでに蒔き、年内に繁茂をうながすことが必要であることがわかってきたとし、「肥料はひまわりと同等の10アールあたり7㎏くらいの窒素成分が必要で、それにはくず大豆、大豆油粕がよい」と述べました。

 栃木の県北は大豆の産地で、これまでもくず大豆は肥料としてそのまま田畑に撒いていたが、「これからはまず油を搾り、油カスが400Bq/kg以下ならひまわり、菜種の窒素成分供給に使える」とし、この油は食用にはできないが、発電機、トラクターなどの燃料として使えるとのことでした。現在はレストランの食用油を使っていますが、「30〜40円/Lででき、軽油よりはるかに安い。搾油機の電源をこれでまかなっており、1リットルの廃油で約6リットルのなたね油を搾っている」と報告しました。

 また大豆は油分19%のところ15%まで搾れるまでに技術は高まっており、「栄養面でもビタミンEなど美肌効果も高いオイルなので、女性にも受け入れられるのではないか」とのこと。具体的な買い取り価格などを示しつつ、「今後は栽培をしながら出荷までの技術を作りあげ、食べる人との連携を深めていくことが大切」と述べました。


「放射能、ネオニコチノイド、農薬・化学肥料の3点セットで、全国一安全なものを」

 最後に、消費者を代表する3つの生協さんから、お話をいただきました。
 アイコープふくしまの佐藤孝之氏からは、放射能問題への取り組みの中で「生産者の努力で福島のものが食べられ、住み続けられるとわかったのが大きな力になった。生産者は”線友”で、見えない鉄砲の弾に共に立ち向かっている」という、力強いお言葉をいただきました。また(高い数値が)出たら生産者を変えるのではなく、助け合って解決した結果「今まで以上に距離が縮まった」と述べ、組合員には数値と同時に生産者の努力を伝え理解してもらうことが大切とも。「これを機会に放射能、ネオニコチノイド、農薬・化学肥料の3点セットで、全国一安全なものを作ろうと話しています」。また履歴を埋め込んだチップを、商品に貼りつけることを考えているとのことでした。

 よつ葉生協の冨居登美子理事長は、組合員の一部から消費者団体なのに生産者のほうを向いているという批判があったことに対し、「安全な食材はそこにあるのではなく、生産者や業者と共に作るものと話した」と述べ、「ネオニコチノイド問題も同じだが、守るべきは未来の子どものいのち。わたしたちにできることは、予防できるものは拒否していくこと」と続けました。また産地で判断するのではなく、しっかり計測し、誰が、どこで、どのように生産したかをわかるようにすることが大切とも。体内除染については、「玄米100%だと子どもは便秘を起こしやすく、玄米を2割とし黒米を少し入れるのがよいようだ」と述べました。

 パルシステム連合会の高橋英明氏からは、「パルシステムでは政府の基準より厳しい、飲料水・飲料・牛乳・乳製品・乳幼児用食品・米10Bq/kg、青果・肉・魚介類など50Bq/kg、海藻・キノコ類100Bq/kgという独自のガイドラインを運用している」と報告。現在ゲルマニウム半導体検出器2台体制で1日30検体ほどを計測しているが、ほとんど検出限界以下。出ないものも含めて、毎週組合員さんに報告しているとのことです。
 米については6月に33産地すべての土壌検査をし、秋に玄米検査をするが、200Bq/kg以上ある場合は何らかの対策をする。また組合員からカンパを集め、カリウム施肥や土壌の検査、洗浄機などに対し50ほどの産地に約3000万円を補助したとのこと。「今後は産地の実態を公開して、組合員さんにどれだけ多く伝えて理解を得るかが課題だ」と述べました。


総合討論では、高齢化する農業に新規就農者をどう受け入れるかが話合われ、2日間の日程を終了しました。

 
 

勇ましい騎馬武者

太田地区のひまわり畑

希望と除染と














杉内氏の水田を視察


春りん蔵の出来具合をみる








武山氏の水田を視察
















菅野正寿氏

杉内清繁氏

奥村健郎氏

大内信一氏

佐藤孝志氏










河田昌東氏














11名によるシンポジウム

真剣に聞き入る参加者



















稲葉光國代表
















佐藤孝之氏 
 
冨居登美子理事長

高橋英明氏