第2回 生物の多様性を育む 農業国際会議(ICEBA2012)
                                                       7月16〜18日 in佐渡

開 催 報 告






去る7月16〜18日の3日間、佐渡市において、
第2回生物の多様性を育む農業国際会議(ICEBA2012---アイセバ2012)が開催されました。
韓国、中国など海外からの参加も含め、420名が参加。
現地調査や記念講演、さらに各地、各国から先進的な事例報告を受け、
活発な意見交換を行いました。



 まず基調講演を、国連大学副学長の武内和彦氏からいただきました。武内氏は、日本には豊かな自然資本とそれを活かす暮らしがあったにも関わらず、それらをおろそかにし、他国から大量の食料や木材を輸入している。IUCNがネイチャー誌に発表した内容によると、他国の生物多様性を損なう暮らしをしている国の1位はアメリカ、そして2位が日本だ。この状況をなんとかしなければ、誇るべき国土にならない、などと述べました。

 佐渡、中国、韓国から、トキ保護の取り組み報告を受けたのち、参加者は、生物多様性と生きもの調査活動、生物の多様性を育む農業技術の探求、多様な主体が参画した循環型の地域づくりという、3つの分科会に分かれ、討議を重ねました。

 当研究所の稲葉光國が座長を務めた、第二分科会の「生物の多様性を育む農業技術の探求」では、豊岡、佐渡、新潟、韓国、フィリピンからの報告を受けました。分科会の内容は、下記の通りです。


   第2分科会
  「生物の多様性を育む農業技術の探求」のご報告



第2分科会は120名の参加者で、現地視察と事例報告、総合討論を行いました。

■現地視察
 現地視察では生物の多様性を育むために設けられた、「江と簡易な水田魚道」を見させていただきました。
 特に魚道設置が町の予算で実施され、手上げ方式で広がっているとのこと。全国の自治体の関係者に見学に来ていただきたい、取り組みでした。
 減農薬・減化学肥料による生物多様性を育む農業に取り組む圃場の見学では、双眼鏡を持ってお待ちいただき、ドジョウなどの淡水魚や水生昆虫、佐渡カエルなど実に多くの生き物を見させていただききました。
 無農薬・無化学肥料による生きものを育む農法を実践する水田では、さまざまな抑草技術の試行錯誤の末に、冬代かきと竹ぼうき除草が行われ、見違えるようなイネに育っておりました。しかし、田植え以後はいっさい田んぼに入らずに抑草に成功する、という状況にまでは至っておりませんでした。
 それを実現するためには苗質の改善が決定的に重要であるとの認識で、究極の抑草法としてポット田植機が展示され、その導入が必要ではないかと示唆されておりましたが、導入に際しての初期投資が高額になることへの懸念が参加者から述べられ、今後の取り組みへの課題を提起されておりました。

■無農薬・無化学肥料で生態系完成し、カメムシ被害なし
                              ---豊岡市


  事例報告のトップを切ってご発表いただいた兵庫県豊岡市の成田市雄さんからは、コウノトリ育む農法認証制度のもとで5割減・減栽培と7.5割減・減栽培、無農薬・無化学肥料栽培が行われ、その取り組み面積が拡大していること、水温の上昇をねらって実施した有機水田をぐるっと一回りして入水させる「マルチパーパスバイオトープ」と2回代かき、EM糖蜜液の投入によって微生物が繁茂し、濁りが継続して安定した抑草ができていることが、報告されました。
カメムシの発生が減・減栽培圃場で常にあり、無農薬・無化学肥料栽培圃場ではクモ・カエルなどの多様な生物による生態系が完成し、一度もカメムシの被害を受けていないことが報告されました。これはIBM(総合的生物多様性管理)の典型的な成功事例であり、NPO法人 民間稲作研究所の有機稲作農家の多くが実践されている抑草と病虫害の防除法です。

■来年からネオニコチノイド系農薬を使用禁止---佐渡市

齋藤真一郎さんからは、佐渡市の「朱鷺と暮らす郷」佐渡認証米制度のもとで減・減栽培がほぼ100%になったこと、8割減の栽培が30%を超えてきていること。特に生き物を育む農法が「減・減栽培以上+(①江の設置、②ふゆみずたんぼ ③魚道の設置 ④ビオトープの設置のいずれか)」として実施されているが、来年からは単なる成分回数ではなく、長期残留と乳幼児への影響が問題視されているネオニコチノイド系農薬の使用を止め、他の農薬に代えるというご発表がありました。これは非常に大きな決断であり、歴史的意義のある取り組みです。

■分厚いバランスのとれた生態系で、害虫がただの虫に
                              ---新潟県


3番目に発表していただいた新潟県農業総合研究所の古川勇一郎先生からは、生きものを育む農法で育てられた生きものたちが、水田の分厚いバランスのとれた生態系を形成し、それが害虫をただの虫に変え、総合的な生物多様性防除が安定するというメカニズムを、農法別のクモの発生調査にもとづきご説明いただききました。
加えて、新潟県全体の環境保全型農業や有機農業の普及状況のなかで抑草法の安定が問題であること、そのなかでチエーン除草が比較的安定した成果を出していることの、ご報告をいただきました。


■BMWで微生物分解をうながし、浮き草で抑草---韓国

4番目の発表は、韓国のチョン・ミンチョルさんのご発表でした。韓国での有機農業がアイガモ農法によって拡大普及し、地域づくり、村づくりに発展していったが、鳥インフルエンザのまん延によってアイガモ農法の実施が困難になり、ジャンボタニシによる除草が主流になっていったこと。日韓生きもの調査の中で、生物の多様性を育み、それを活用した抑草法が提案され、ジャンボタニシに代わる抑草技術が確立されつつあることが報告されました。
特にプルム学校のあるホンドン地区では畜産業が盛んであり、水田に豊富な堆肥が入れられる環境にあるが、ややもすると未熟堆肥の大量投入によって根腐れを起こす危険があること。それを回避するためにBMWによる微生物分解を促すことで、水田に大量のウキクサが発生し、光を遮断してコナギの生長を完全に抑制することが報告されました。
まさに生物の多様性による抑草法が実現した好例です。日本での実践例も含めて国際的にアピールする段階にきていると思いました。
 
■「緑の革命」から脱却し、自然循環型の有機稲作を推進
                            ---フィリピン


最後にご報告いただいたローデス・アウグスト・サイザンさんとギルバート・ホーガンさんのご発表は、IRRI(国際イネ研究所)が中心になって進めた「緑の革命」から無縁だった、古代米の生産地域のシンプルで豊かな農村生活のご報告と、「緑の革命」によって化学肥料と農薬の大量使用の農業に巻き込まれ、環境と農家の経済を破壊された地域の報告が行われました。そして、それからの脱却が自然循環型の有機農業にあること、SRIによる有機稲作を推進していることがご報告されました。

■IBMをまとめ、地域や消費者と実態の共有を---総合討論

総合討論ではIPM(総合的病害虫防除)からIBM(総合的生物多様性防除)への技術的発展をどう見通すか、生物の多様性を育む農業の発展にとって必要な消費者との関係をどう構築するかという、2点に絞って熱心な討論が行われました。
 IPMからIBMへの技術的展望は兵庫県豊岡市、佐渡、韓国ホンドン地域を始め日本と韓国では技術的な完成度が高まってきており、IBMの内容をとりまとめていく時期にきているという結論に達しました。
 生きものを育む農業をより一層拡大していくために必要なことは、地域や消費者のみなさんとこの農法の価値や食の安全の確保について、その実態をリアルにとらえ共有することが必要であるとの結論でした。
 特に衝撃的な重い発言がありました。それは福島原発事故による放射能汚染によって、この農法で取り組まれたお米が消費者から拒否されるという厳しい風評被害に会っている事実です。消費者のこの悲しい消費行動をどう乗り越えるかが、論議されました。

■消費者と共に、世界農業遺産を守り、
 自然エネルギーへの転換を


 結論としては、佐渡の美しい水田を維持している年間5~6回の畦畔の刈払いが、高齢化によって危機に瀕している事実を広く消費者に訴え、大胆にボランティア参加を呼びかけ、世界農業遺産を国民の宝として、ともに支えあう強い絆をつくりあげることが必要である。また、放射能に汚染された田畑の除染をどう克服しようとしているかをていねいに発信し、消費者の共感を得て消費の落ち込みを食い止め、ともに脱原発と自然エネルギーへの転換を進める共同運動に発展してきていることを確認しましました。
 
 
 
講演する武内和彦氏
 

抑草技術の現地視察
 
 
 
座長を務める稲葉理事長
 
満席状態の第二分科会
 
発表するフィリピンの代表
 
 
展示、書籍販売もしました
 
交流会から-
 
地元高校生による踊りも
 
韓国チームも歌を披露
 
 トキの着ぐるみが大人気
 
最後に全員で記念撮影