2012年度有機農業市民講座 第4回 スペシャル講座

「内部被曝から身を守るための食材・調理・食べ方の工夫」

-講師 境野米子さん-





   
必死に食の安全を守ろうとする生産者がいる一方、
日々、内部被曝におびえるお母さん方がいます。
福島在住、薬剤師であり生活評論家の境野米子さんが、
内部被曝の防ぎ方、免疫力の高め方、本来の健康、
福島の現状など多岐にわたるテーマを、
笑いを交えて話してくださいました。




■化学式でわかる、ネオニコチノイド系農薬の危険性

 こんにちは。境野米子です。これは本名で、「こめこ」と読みます。リンゴが1個という配給の時代に生まれ、母が、日本がずっとお米に不自由しないようにと付けました。でもわたしが育った時代は米が余る時代。去年、パンの需要が米を上回るという体たらくです。

 たしは東京都立衛生研究所で、最初の3年は食品添加物の研究室、その後4年間は乳肉研究室で、牛乳と肉の残留塩素系農薬や重金属汚染などの調査研究をしていました。戦後、ノミ・シラミ対策として残留性が高く危険が大きいBHCやDDTが、人々の頭に大量に振られました。その後レイチェル・カーソンの『沈黙の春』などによって世界中で規制がかかりましたが、10〜15年たってもお母さんの母乳から出てきました。

 いったいなぜか。わたしたちは母乳や牛乳を調べました。農薬のほとんどは水に溶けず油に移行するので、油分のあるものを分析しないと出てこないのです。すると草、土に残っている農薬が、牛の乳に出てくる。それが母親の乳に出てくる。しかしその報告をしても、歴史は繰り返されるというか、学ばない。規制にはいたらないんですね。

 だいたい毒のないものは農薬にはなりません。毒があるから農薬になるわけです。さきほど稲葉先生からネオニコチノイド系農薬の話がありましたが、危険性が高いのは構造式から見てもわかります。まずシアノイミンン(=N-CN)構造を持っている。ニコチンは人間にとって非常に強い毒性があることがわかっているし、発がん性もある。さらにクロロ(塩素)を持つ構造、塩素が使われているので、残留性も高い。化学者であれば、構造式を見ただけで残留性が高いだろう、生命体に大きな影響があるだろうことがわかります。フランスはこの農薬を厳しく規制し、ドイツも販売禁止となりましたが、日本という国は、非常に有用性があるという考え方をします。毒であっても使い方によっては役に立つ、と考えるのが、残念でなりません。

 わたしは長年、農薬の空中散布に反対する運動をやってきました。田んぼや畑など局限されたところで撒くのは許容できても、空から農薬を撒かれると数㎞四方にわたって汚染される。しかも農薬は1〜2カ月残留する。揮発性があるので温度が上がると大気中に出てきて、そこを歩く人が吸い込むことになります。信夫山(しのぶやま)という福島市の中心地にある山で、スミチオンという有機リン系の農薬を撒いたのです。するとそれは、福島全体に広がります。

 当時わたしは”安全なものを食卓に”と有機農業の運動をしていましたが、それが何の意味もなくなります。福島全土が農薬で汚染され、その空気を24時間吸うわけです。寝てても吸うのですから、食卓に無農薬野菜を並べても、何もならない。それで主婦グループが絶対反対と立ち上がりましたが、世の中を変えるのがどれだけ大変なことか。革新政党からさえ、農薬は労働者農民の労働を軽減する、収穫を確保するために必要だと言われました。農薬が飛散する調査を横浜国立大学にしてもらい、それをNHKなどで放映してもらい、中止に3年かかりました。


■先進諸国に多い不妊症は、界面活性剤が原因では?

 こうしたことは何にでもあります。大阪大学の野村大成教授がWHOで、先進諸国に多い不妊症流産について研究しました。中国やインドでは乳児の死亡率が高いにもかかわらず、爆発的に子どもが生まれています。赤ちゃんを産めない女性はいません。なぜ先進諸国にだけ、不妊症が多いのか。教授は先進諸国だけが大量に使っている日常的な商品として、合成洗剤に注目しました。わたしたちが毎日大量に使っているシャンプー、歯磨き剤、そのすべての中に入っている一般的な界面活性剤です。

 実験ではネズミの毛をそって、界面活性剤と同じものを20-25%の濃度(シャンプーの濃度)で塗ります。でも何も起きない。ところが受精卵だけが流れる。痛くもかゆくもないのに、受精卵だけが流れる。もしこれが人間の体なら、お母さんが妊娠に気付かないうちに流れてしまうと、野村教授はおっしゃっています。野村教授と日本の大手の合成洗剤メーカーとの対談で、「ねずみとはいえ、なぜこのような問題のある洗剤が何の規制もなく、放置されているのか」という先生の問いに、メーカー側は「非常に有用性が高いから」と答えています。

シャンプーのCMでは風になびく髪の映像がよく出てきますが、あれは界面活性剤で自分の髪の脂がゼロになるからなのです。因幡の白ウサギ状態なのですが、それを心地よいと思う人がほとんどです。そしてメーカーと学者が一致して、有用性の高いものは規制にかけられないと言う、こういう時代です。


■茅の屋根、杉、つげ、松の木の放射線量が下がらない

農薬に多少の毒性があっても、なかなか禁止、中止の方向に持っていくのは難しい。そういう国で、原発事故は起きました。この地の葉っぱには放射能はついていないんだろうと思うと、本当にうらやましいです。わが家は敷地内と犬の散歩道にある農産物で、本当に豊かに暮らしていました。ところが今は、何もかも汚染されたまま。畑で約1.2μSv/hくらい、庭で約0.8μSv/h、高いと3μSv/hや6μSv/hというところもあります。地域で汚染マップを作りましたが、神社などは絶対に下がらない。後ろが杉林ですから、どうしようもない。細い葉っぱなどの汚染がいちばん強く、杉、松、つげなどは危険です。

 わが家は160年の古民家を修復して移住し、18年になります。何しろ惚れ込んだ家で、見れば見るほど美しい。見学に来たいという人が多く、年2回オープンハウスをしているくらいなのですが、屋根が茅なのでこれが屋内の線量を上げて、室内で0.5μSv/hくらいあります。人を雇い、建具や窓枠を洗い、畳も拭き、高さが5mある梁も拭いて徹底的に除染しましたが、全然下がらない。結局、茅屋根と山から汚染が落ちてくる。枯葉も一年中降ってくるから、下がりようがない。みなさんにぜひ遊びに来ていただきたいです。東京の友人にも、ぜひ被爆しに来てくださいといっているのですが(笑い)。 

 福島では森林の除染の見直しが始まるようですが、森林の除染には懐疑的です。いったい、どうやるのか。30年で半分、100年でゼロ近くなるなら、100年このまま行こうよと思っているくらい。いちばん悲しいのは、孫たちが安心して来られなくなったことです。今年も線量が高いのでやめたほうがいいと言いましたが、「自分の家に帰れないことがどんなにつらいことか」と言って、ゼロ歳、2歳、3歳の孫を連れて、2人の娘は帰ってきましたが。

 福島の子どもたちは、外で遊びません。幼い子どもたちのために、年齢制限付きで無料から200円程度で遊べる屋内遊び場があちこちに設けられています。公園も学校も除染は済んでいますが、学校も時間制限での運動で、そういう中で子どもたちは本当に我慢しています。ナメクジが7〜、8㎝もあり、セミやトンボが頭や肩に止まる、カブトムシが体当たりしてくる。そういうところで、いっさい外に出られないということがどんなことなのか。想像がつくでしょうか。

 福音館の「子どもの友」という本で、ダンゴムシの特集をしていました。非常に汚染が強いというただし書きがあり、汚染の強いところではこのような遊びはしないように、と書かれていました。ダンゴムシなんてどうしようもないくらいいるのに、娘たちは「見せないで。見せれば触りたがるから」と言います。
 猛暑の中
30名以上に
お集まり
いただきました
 

■80歳のおばあちゃんと、セシウム、ベクレルの話


 食卓にのせるものは、より深刻です。測定済みだし信頼のおける生産者が作っていると言っても、娘たちは受け付けません。今までは畑でとれたものを山のように送り、夫などそのために畑を作っていたくらいです。梅の木も5本ありますが、まったく収穫しない。タラの芽なんていちばんの採りどころで採って、死ぬほど食べられたのにそれができない。フキノトウもフキもコゴミも山菜は全滅で、キノコもダメ。本当に情けないのを通り越しました。

 ご近所でも、会えば1時間はその話です。80歳のおばあちゃんと、ベクレルとセシウムの話ですよ。去年の3月11日前はセシウムもベクレルもシーベルトも、そんな言葉があることすら知らなかった。6月に運動会がありましたが、自分のつなひきの順番も忘れ競技場に背中を向けて、みんなでタケノコ食べたか、食べないかの談義です(笑い)。タケノコは基準値が100Bq/kgで、150Bq/kgが出て出荷停止になっています。だけども、その150Bq/kgのタケノコを、汚染されていない米ぬかと酢でゆでたら、10Bq/kgになったと言います。「ほんじゃあ、食うべえ」みたいに盛り上がって(笑い)。それでも「うちは食わねえ、孫がいるから」みたいな人もいたりして、それだけで1時間。今までなら天気や作物の話だったのが、今はひたすらセシウムの話です。

 いま福島県民は、内部被曝が大きな問題となっています。ドイツの資料によると、チェルノブイり事故後の内部被曝は94%が食べ物から、5%が飲み物、1%が空気からとなっています。わが家はすべて地下水で暮らしていて真っ先に測定してもらいましたが、井戸水、わき水にも出ていません。チェルノブイリで25年経ってどのくらい浸透しているのか、そのまま日本に適用することはできません。稲葉先生の研究成果が待たれるところですが、日本の農地は非常によくセシウムを取り込んでいるようで、作物に移行させず、チェルノブイリとまるで違うことがわかっています。

 福島は、会津の白虎隊でもわかるように実直で最後まで忠誠を尽くすという県民性のため、検査を熱心に行っていますが、食べ物から放射性物質をどう減らすかがいちばんの問題です。日本の場合、出た放射性物質の8割は海に流れたといわれ、これほど大変な思いをしていますがたった2割です。チェルノブイリの時には、ほとんど100%がヨーロッパ全土に降り注いだと言われています。フランスもドイツもスイスも農業国で、本当に大きな影響を受けました。


■汚染されても、チーズ、バター、アルコールはつくれる

 なかでもいちばん影響を受けるのは、牛です。鶏や豚からはほとんど放射性物質は検出されていません。エサがすべて外国の飼料、しかも屋内で飼われているからです。唯一牧草を食べる、このエコロジーの大地の上に住む牛だけが汚染された。しかも牛は反芻する胃を持っていて、汚染された草から徹底的に栄養を摂取します。人間が食べても何の栄養もないような草を食べて、あの大きな体を維持しているのです。だから汚染されるのです。これは産地に関わりなく、汚染された草を食べていれば鹿児島だろうが北海道だろうが、25年経とうが同じです。チェルノブイリでは今も牛乳から出てきます。今でも汚染された牛乳がないとは言えません。もちろん基準値は超えていませんが、まだまだ生産者の注意が足りないところがあると思っています。
 
 大きな影響を受けたヨーロッパは、汚染された乳製品を何とかしなければならないと、さまざまな研究がされました。日本でも最初に規制されたのが牛乳で、捨てられる牛乳をテレビで見た方も多いと思いますが、本当は残念なことでした。というのは、ヨーロッパでは汚染された牛乳でチーズを作りました。すると7割減らせる。バターにするとセシウムは油に移行しないので、95%以上セシウムをなくせます。一般的な作り方でそうなので特別な手順を経れば、100%セシウムを取り除いたバターができるのではないかと思っています。

 またワインの一大産地では、ブドウに強い汚染がありました。チェルノブイリ事故が4月下旬で、ブドウの花が咲く頃だったからです。福島が梅の花が咲く時期で梅が汚染されたのと同じです。ヨーロッパではそれを、ワインにしました。すると75%のセシウムを除くことができます。さらにブランデーにすると、セシウムはゼロになります。そういうことがわかっているのです。ヨーロッパではそういうふうにして、自国の農業を守っているのです。

 だからお米も全部政府か東電が買い取って、焼酎や日本酒を造ったらいい。ものすごい支援の輪が広がっているこの時に、原発焼酎、原発日本酒を造って、世界中で支援してくれる人に買ってもらう。そうすれば雇用が生まれ、会社が成り立ちます。なぜそれを考えずに、TPPに加入しようとするのか。日本の農業、東北の農業の息の根を止めるつもりなんだと、わたしには思えます。稲葉先生がさまざまな努力をされていますが、こういう努力が実っていかないような国だと、福島の農業だけでなく、わたしたち国民の息の根も止められます。ひとり1人の明日のいのち、10年、20年、30年先の日本の農業をどうするのか、日本人のいのちをどのように守っていくのか、そういう問題に深く関わっているのではないでしょうか。


■収束作業にあたる労働者のガンは、労働による被爆と関連づけられない

 6月にイギリスのネイチャー誌に、非常にショックな記事が掲載されました。いま福島原発で収束作業にあたっている非常に強い被爆を受けている労働者たちは、これから10〜20年先にガンや大きな病気になったとき、それを被爆と関連づけて因果関係を証明できないだろうという、論文でした。どう思いますか? 原発で働いている労働者が受ける被爆と健康被害との因果関係を関連づけることができなければ、わたしたちが、子どもたちが、避難ができずに福島で暮らしている人たち、あるいは非常に強い放射線の中に避難させられ長期間滞在せざるを得なかった人たちも、まったく関係ないとなる。これは、どういうことなのでしょうか。

 それは、こう関係があると言われています。日本人の発がん性が非常に高いために、原発事故が起きなくてもみなガンで死んでいるということです。わたしたちの2人に1人はガンになり、死亡者のうち3人に1人がガンで死んでいます。ここ10年以内には2人に1人がガンで死ぬだろうと、多くの学者が予測しています。そういうガン大国日本においては原発事故などさして影響せず、ガンとの関係などあるわけがない、あっても因果関係を突きとめられるわけがない、というのが学者の見解です。

 チェルノブイリの放射能と関連づけられている病気は、たったひとつ。子どもの甲状腺ガンだけです。広島、長崎の被曝者のなかには、未だに被爆者として認めてほしいと裁判で闘っている人たちがいます。政府からは、住んでいた場所や滞在日数などの理由で被爆と認められない方が多くいます。同じようにすべての子どもの甲状腺ガンが被爆と関係すると認められているわけではありません。たとえば事故後数カ月で発病した子どもを原発事故によるものと認めるかという論争があり、数ヶ月でガンが発生することが証明できるまでは影響は認められないとされています。

 このような中で、健康調査を求めてもむなしさが残ります。アンケートに答えない人も多く、被爆手帳を持たせろという運動がある反面、被爆手帳への拒否反応もあり、県民の意識もさまざま。学者の意見も右から左まである中で、多くの方が悩んでいます。ただその中で唯一、一致しているのは、小さい命ほど感受性が強いということです。だからわたしたちは、小さないのちを守りたい。胎児、乳児、幼児の内部被曝だけは防ぎたいと、動いています。
  ごあいさつする
稲葉代表
 

■内部被爆を防ぐには、ひたすら洗い、酢を使う

 どうしたら内部被曝を防げるか。まずは徹底的に洗うことです。検査は抽出検査で、すべてを測ってはいないのです。人間は間違いを起こすもので、もしかしたら土が残っているかもしれない、土の上に落ちたかもしれない。福島でも除染をした生産者ばかりとは限りませし、近県では除染していないところがほとんどではないでしょうか。わたしは事故後、桃もトマトもキュウリも、すべてたわしで洗っています。

 セシウムは250〜300度の高温で焼いても煮ても減らないのですが、水に溶けやすいことがわかっています。ただ溶けても再付着をするので、ほうれん草を水につけるなら水を替えなければなりません。また酢に溶け出しやすいこともわかっていて、チェルノブイリのデータではキュウリでは95%が酢に移行します。食酢でなくてもクエン酸など酸性なら同じです。

 ジャガイモ、サツマイモは、セシウムが蓄積しやすいことがわかっています。ほうれん草はゆでると60-70%なくなりますが、じゃがいもはゆでても30%しか減りません。子ども用なら産地を選んでゆでて食べることが必要で、2%の酢でゆでるのがお勧めです。これは肉や魚も同じで、酢に漬けると少しは溶け出す。しいたけなどの菌類はものすごい汚染で、セシウムが大好き(笑い)。山の除染を椎茸でできないかと思うくらい吸い、ほとんど汚染のない横浜のしいたけに2000Bq/kgで、群馬も千葉も出荷停止になっています。チェルノブイリでは30年たっても同じです。

 ベリー系や山菜系もだめで、本当に犯罪的なことです。福島県民は便利さよりも、神様が山の幸をくださっていると摘んでいました。人間の生きる根源的な喜びです。そういう暮らしをなさっている方はたぶん共感してくださると思いますが、採って食べるという行為が失われたのです。本当にがっかりです。生きる意欲を失わないでがんばれ、と言うほうが過酷で、みんな、がんばれという言葉を聞きたくない。原発事故の話は聞きたくない、見たくない。テレビを消します。すべての記憶から消したいのです。すべて失ったことに、どう向き合ったらいいか、どう表現したらいいか、わからない。大阪人が、「これが大阪で起きていたら暴動が起きていた」とおっしゃっていました。またある人が言っていました。「どこで起きてもおかしくない事故だったが、東北で起こすのがいちばん好都合だっただろう」と。福島県民はおとなしい県民性で、政府にたてつかず、じっと堪え忍んで我慢しています。


■ポリフェノール、ミネラル、繊維質、ペクチンで免疫力をつける

 免疫力を作る、ガンにならない体質を作るにはどうしたらいいでしょうか。甲状腺ガンが多発したベラルーシでは、たくさんの子どもがさまざまな病で苦しんでいます。その子たちの放射能の排出を高め免疫力を高めるために、さまざまな試みがされてきました。その結果、放射能と闘う免疫力をつけるには、ポリフェノール、ミネラル、繊維質、ペクチンが有効とわかりました。これらを含むものを、子どもに毎日欠かさず食べさせることです。

 わたしは膠原病を、父は末期の肝臓ガン、親友は大腸ガンを克服しましたが、その療法も非常に効果的でした。今の医療ではガン細胞が1㎝以上でないと見つけられませんので、わたしたちはもっと自覚的に判断する必要があります。まず何が効いたかというと、酸素、つまり呼吸です。大きな病気を持っている人は呼吸が浅くなるので、十分に腹式呼吸をして、ただ無料の酸素を身体に入れることです。

 次に代謝を活発にすること。そのためには、水が大切です。わたしは病を患ったときに、甲田光雄医学博士の下で1週間の断食を行いました。1日に2リットルの水を飲み、水だけで暮らします。コーヒーやお酒は水を飲んだことにはなりませんよ。コーヒーのカフェインは劇薬、アルコールは微生物も殺す消毒薬ですから、どちらも解毒のために大量の水を必要とします。

 また、排出しやすいからだを作るのも大切です。自然の暮らしと遠ざかれば遠ざかるほど、便秘症が増えます。繊維質のものをとよく言われますが、甲田先生はまず腸を動かせと言います。なぜ断食がよいかということ、いちばん便が出やすい状態になるからです。40日くらいの断食は普通で、日本ではお坊さんの修行は33日行。つまり人体実験済みなのです。3回食べたら、3回出す。すると便の匂いがなくなり、おならが出なくなります。


難病、ガンを克服した食事療法と、お年寄りに学べ

 わたしの友人は医者ですが、ガンが肝臓2カ所に転移し、数ヶ月もたない、病院でのすべての治療を終えると言われ、ゲルソン食事療法を実践しました。マックス・ゲルソンというドイツの博士が生み出した療法です。セシウムの問題と絡めて不思議に思うのは、甲田療法、ゲルソン療法のどちらも、いちばんの目玉が野菜ジュース、ニンジンジュースを大量に飲むということ。ベラルーシの研究所でもニンジンジュースと野菜ジュース、フルーツジュースを勧めています。なぜでしょうか。

 玄米や野菜が健康にいいと言いますが、それはしっかり噛めて、唾液が出て、胃液が出て、腸がよく動く健康な人に対してです。噛むことで唾液が出、唾液が出るから胃液が出る、胃液が出るから腸が動くのです。わたしたちはそれを、あまりにもおろそかにしてきたのではないでしょうか。子どもの頃から、健康な時から硬い物を食べていないと、病気になってから玄米だ野菜だと言っても遅いのです。

 病気になったらジュース、そしておかゆや重湯です。人種や病名によらず、世界共通の免疫力を高める方法があると確信しています。(被爆している)子どもには野菜ジュース、ニンジンジュースを飲ませる習慣をつけて欲しいですね。みなさんもガンで治らないと言われたら、大喜びでニンジンジュースを飲んでください(笑い)。わたしの父は80の時に肝臓ガンの末期と言われ、手の施しようがなく、放射線治療できませんでした。顔が黒くなり、おしっこも真っ黒でした。ところがこの食事療法を実践したところ、ガンの腫瘍が消え、検査に来ていた医師もビックリで、それから4年生きました。

 わたし自身は、18年前に難病指定の膠原病という病気にかかり、10本の指がパンパンに腫れて動かなくなりました。ボタンもかけられないし、靴下も履けません。寝てても痛くて、自分の声で目が覚める。完全に治ることはないと言われ、漢方を処方してもらいましたがそれは飲まず、甲田先生の病院で断食を受けることにしました。その後5年間にわたり、甲田先生のご指示にしたがって断食を16回繰り返しましたが、みるみるよくなりました。この話を頭の隅に置いて、病気が治らないと言われた時には思い出してください。より詳しいセシウムの排出や免疫力アップ、病と闘う方法については、本を読んでいただければと思います。

 また甲田先生は、まず「人間はどういう状態が健康なのか、それがわかっていないといけない」と言っています。ベストな状態は、いくら働いても疲れない、ぐっすり眠れる、食べ物がおいしい、これです。わたしも「疲れた」が口癖だったのですが、今はどんなに無理をしても疲れるという自覚がありません。どうなるかというと、眠くなる。お日様が沈むと眠くて、7時には寝ています。5〜6時間で目が覚め、それから仕事を始め、原稿は夜が明ける前に書き上げます。夜が明けると、犬の散歩と農作業。毎日主人といっしょに、1500坪の敷地を1時間半かけて草むしりします。汗びっしょりかくと、本当に幸せ。生きててよかったと思います。昼寝もぱっと寝て、ぱっと起きる。疲れはありません。ごはんがおいしく、ぐっすり眠れる。本当に感謝です。

 みなさんの周囲には、長生きのお年寄りがいらっしゃいますよね。そういう人のライフスタイルを見習うことが大切です。運動やジョギングをしたり、プールなどにお金を払う人もいますが、昔のお年寄りでそうしている人はいません。わたしは100歳以上の人を訪ねたときに、目からうろこが落ちました。部屋が整理整頓されて、ピカピカ! 働き者なんです。長生きをしている人で、働き者でない人はいない。それまでのわたしは仕事は8時で閉店とか言って、後はこたつに寝転がっていましたが、運動は掃除、家事なんだと思い、身のこなしも軽く台所に立つようになりました。今の日本は、まったく長生きの高齢者に学んでいません。

 さらに甲田先生は、腹6分がいいと言っています。昔、かつかつな時代が8分であり、今は8分では多いと。またお米の消費が減り、日本の伝統的な食生活が失われていることは、子どもの健康が損なわれていることと関係があるのではないかと思っています。今は世界一の長寿国ですが、子どもたちがおとなになったときに長寿国でいられるのか。家庭での食生活が、おじいちゃんやおばあちゃんが食べてきたような、日本の伝統的食生活を守るようなものであれば、ガンという病気も、たくさんの難病も少しはましなものになるのではないかと思っています。ご静聴、ありがとうございました。



         境野 米子(さかいの こめこ)さんのプロフィール

1948年 生まれ。生活評論家・薬剤師。群馬県前橋市出身。千葉大学薬学部卒業。
東京都立衛生研究所にて、食品添加物や残留農薬などについて研究したのち、福島県に移住し、有機農業運動に携わる。

ブログ

境野米子の自然暮らし http://memesk.jugem.jp

●主な著書

『米子の畑を食べる』(1992年 七つ森書館)
『米子の土を食べる』(1994年 七つ森書館)
『さくら あじさい まんじゅしゃげ』(1996年 七つ森書館)
『化粧品の正しい選び方』(1998年 コモンズ)
『気楽に自然食レシピ』(1998年 創森社)
『よく効く野草茶・ハーブ茶』(1999年 創森社)
『おかゆ一杯の底力』(2000年 創森社)
『買ってもよい化粧品、買ってはいけない化粧品』(2000年 コモンズ)
『一汁二菜』(2001年 創森社)
『卵・牛乳・油ゼロ アトピーっ子も安心のお菓子』(2002年 家の光協会)
『病いと闘う食事』(2002年 創森社)
『安心できる化粧品選び』(2003年 岩波書店)
『玄米食完全マニュアル』(2003年 創森社)
『アトピーっ子の満足レシピ』(2003年10月 家の光協会)
『肌がキレイになる化粧品選び』(2003年10月 コモンズ)
『化学物質に頼らない 自然暮らしの知恵袋』(2004年2月 家の光協会)
『素肌にやさしい 手づくり化粧品』(2005年8月 創森社)
『新・買ってはいけない 2006』(2005年12月 週刊金曜日)
『自然暮らしのレシピ』 (2006年4月 家の光協会)
『こどもに食べさせたい ごはんと野菜』(2006年10月 学陽書房)
『新・買ってはいけない4』(2007年 週刊金曜日)
『あの日からのお母さんのしごと―わが子を放射能から守る知恵と工夫』(2011年2月 ワニプラス)
『子どもを放射能から守るレシピ77』(2011年3月刊 コモンズ)
                             

■講演内容は、研究所通信にも掲載予定です。