総会・公開シンポジウムが開催されました

2月13日(土)~14日(日)の2日間にかけて、宇都宮市のコンセーレを会場に、平成27年度民間稲作研究所総会、ならびに2016年公開シンポジウムを開催いたしました。
質疑の様子

シンポジウムでの質疑の様子

13日の午前中に開催された総会では、正会員、法人会員の皆様によって、平成27年度の事業報告、決算報告、平成28年度の事業案と予算案が承認されました。

午後からの公開シンポジウムでは、まず、第Ⅰ部『慣行栽培を超える「誰でもどこでもできる有機農業」の新展開』と題して、稲葉理事長をはじめ有機農家の方たちや、農業とは全く縁のなかった一般の方が有機稲作に挑戦した話が紹介されました。

続いて第Ⅱ部の『TPPに対峙する地域自給の試み ― その歴史的意義』では、地域に根ざした活動としてグリーンツーリズムや地域再生に取り組む有機農家の方たちの活動報告のあと、宇都宮大学農学部のの秋山満教授による特別講演「TPP大筋合意の真実と食を起点とした地域経済再建の意義」を拝聴し、TPPをはじめ、農業者が直面する経済的・経営的な問題について、参加者の皆さんと意見を交わしました。

稲葉理事長による基調講演

稲葉理事長による基調講演

秋山満先生による特別講演

秋山満先生による特別講演


尽きせぬ議論は夜の懇親会にも続き、北は北海道、南は九州宮崎から集まった参加者の自己アピール大会や、その後2次会のブータン王国への支援事業の説明会など、寝る間を惜しんでの交流が行われました。

2日目は、第Ⅲ部『子供たち・そして生き物の未来を守るために』と題して、農業と食をテーマに、民間稲作研究所の地域自給の取り組みや、千葉県いすみ市で学校給食に有機米が採用されるに至った活動の報告の後、ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議の橘高真佐美先生による講演「持続可能な農業のための農薬管理・規制に向けた提言」、東京女子医科大学の平久美子先生による講演「ネオニコチノイド系殺虫剤の環境暴露と記憶障害」を拝聴し、何故か語られることの少ない、農薬の規制に関する問題や、人体、とくに発達中の子供への影響と危険性について学びました。

最後の総合討論まで議論は尽きず、時間を惜しんでの閉会となりました。

橘高真佐美先生による特別講演

橘高真佐美先生による特別講演

平久美子先生による特別講演

平久美子先生による特別講演


参加者の皆様にお知らせ

  • 第Ⅲ部の講演で橘高先生、平先生がご提示されたプレゼンテーション資料は、再編の後、研究所通信16号(3月末発刊 1,500円)に掲載する予定です。
    研究所会員(賛助会員以上)には無料で送付いたします。会員以外で当日ご参加頂いた皆様にはご案内をお送りいたします。
  • 閉会後の事務連絡で、来年度の開催予定日をお知らせいたしましたが、準備の都合上、来年度は2月25~26日の開催予定(※2016/3/3 再修正)2月18日(土)~2月19日(日)とさせていただきます。混乱を招いてしまい、申し訳ありません。

稲葉より(2016/03/07 追記)

NPO法人民間稲作研究所の定期総会が開催されました。大ホール満席の参会者でTPPに対峙する「いのちを守る地域自給」をどう進めるか!特別講演と報告・討論が行われました。会場からは有機農産物による食の安全確保だけでなくグリーンツーリズムや手作り自給運動を含めた幅広い取り組みに関する意見や質問が出され、有意義な2日間でした。

耕地面積あたりの国別農薬使用量(有効成分)の推移

公開シンポで特別講演を頂いた橘高真佐美(弁護士)氏は日本の「農薬取締法」が米国占領時に農薬の販売を目的に制定されたのに対し、EUの「農薬指令」が化学農薬の使用による人体や環境への悪影響を少なくすることを目的に掲げ、代替技術の開発を進めているという根本的な違いがあることを強調されました。その法制度の違いが右図に示された国別使用量の推移です。中国の急増にショックを受けました。今後、日本を含むアジア・中南米などの農村が日本を含む欧米先進国の開発した化学農薬のごみ捨て場になっていく可能性が浮き彫りになってきました。物言わぬ善良な農民に付け込んで安全神話を振りまき、残留基準を緩和し、販売量を増やしてきた業界や行政の罪は大きいと思います。

一方、幸福の国ブータン王国は使用していた農薬を世界有数の農薬会社であるシン・ジエンタの本拠地スイスに返却し、2020年までに有機農業100%をめざすと宣言した唯一の国です。殺戮を拒否する仏教国の本領発揮です。とは言え、主食の稲作で除草剤を使わざるを得ない現実があり、その克服が課題であるとの農業大臣の報告を受け、当研究所理事の田坂興亜氏が当会の有機稲作技術を紹介してきました。その後同国の有機農業課長から具体的な支援要請があり、JICAの草の根支援活動に応募し、1月末日に採択され今年度から本格的に支援活動を開始することになりました。2020年までに有機農業100%をめざすブータンが循環型の有機農業によって農業生産が向上し地域経済や文化の発展が成し遂げられれば、アジア・アフリカ・中南米の国々の目指すべき未来像のモデルケースになるのではないかと期待します。JICAの資金援助だけでは活動が不足する部分も想定されますので、その節には是非ご支援下さい。

特別講演Ⅱでは現在、世界でもっとも多く使用されているネオニコチノイド系農薬とフィプロニル農薬について、平久美子医師からの報告があり、今までの農薬との違いが説明されました。使用禁止になったDDTよりも、効果が長期間にわたり、生体内特に神経系に蓄積することが判明してきているとのことで、毎日シロアリ駆除剤や壁などの生活環境や緩和された高い残留基準の野菜や果物・お茶などの摂取によって神経に蓄積し、ある日突然気が触れるという事態に陥っても不思議でない農薬汚染が広がっていることが示されました。

過去の殺虫剤との違い

講演では紹介されませんでしたが、フィプロニル農薬プリンスという商品名で使用量が増えています。鎮静効果があり、抗酸化力が強いとされるギャバの阻害剤でネオニコ以上に残留性の高い農薬です。この農薬でアキアカネが絶滅の危機にあることが科学的証明されていますが、興奮状態をコントロールできなくなるという作用は人間界にも影響を与えつつあるのではないかと心配です。(稲葉記)

年々日本人尿のネオニコチノイド検出率は増加している